最高裁調査官でもあった瀬木比呂志元裁判官の著書『絶望の裁判所』(講談社現代新書)が評判ですが、紛争解決の場は、裁判所だけではありません。
東京弁護士会にも紛争解決センターという和解のあっせん手続(ADR)をおこなう場があります。
裁判所で紛争の解決を目指しても、厳密な立証を求められ、話さえ聞いてもらえず、時間がかかったにもかかわらず結局納得のいかない結果で終わりストレスが増えただけということも少なくありません。
一方あっせん手続とは、あっせん人が間に入りますが、当事者が主体的に話し合いながら納得して紛争を解決していくことを目指す制度です。あっせん人は経験豊富な弁護士がなります。
紛争に至った問題の本質的課題は何であったか、お互い譲歩して解決できる点はないかなど、中立の第三者が間に入って当事者から話を聞きながら進めることで見えてくることもあるでしょう。
あっせん手続は、申立てが簡易で、代理人なしでも申立てができ、解決までの期間が短い点にも特徴があります。手続が非公開である点も大きな特徴です。
判決と同じ効力を得たい場合には、仲裁手続に移行することもできます。
費用は、申立時の申立手数料、期日ごとの期日手数料、和解成立した場合の成立手数料がかかります。
あっせん手続は以下のような紛争に向いているといえます。
- *第三者のいる場で納得して和解したい。
- *公にしたくない。穏便に解決したい。
- *相手方と白黒つけてどちらかにわだかまりの残るような解決は望まない。
- *紛争を解決した後は相手方と発展的関係を構築したい。
- *訴訟にいたるまでもないが、解決したい。
- *専門的紛争(学校問題、医療、金融など)
- *解決に長い時間かけられない。長引けば勝訴しても意味がない。
*ADRとは、英語でAlternative Dispute Resolutionの略で、一般に裁判外紛争解決手続と訳されています。